- 現状と実績
- 部位別がん治療への有効性
部位別がん治療への有効性
骨・軟部腫瘍は最も良い適応
【治療成績】有効性が確認されているがん種
放射線医学総合研究所病院での臨床研究の結果、下記の部位のがんについての有効性が確認されています。部位ごとの詳細はQST病院 重粒子線治療についてを参照してください。
頭頸部がん(眼を含む)
局所制御は良好で、特に腺がん、腺様嚢胞がん、悪性黒色腫については特に高い(70-80%)局所制御率である(シリーズ27参照)。
【悪性黒色腫】照射線量:57.6GyE 照射回数:16 回 治療期間4 週
頭蓋底腫瘍
頭蓋底腫瘍は、頭蓋骨の底部に発生する腫瘍の総称であるが、臨床研究は主として脊索腫と軟骨肉腫を対象に行われた。外科切除は危険性が高く、治療成績も不良であるが、最終的に確立した照射量での症例については、5年で約80%の局所制御が得られた。
肺がん(非小細胞肺がん)
末梢型Ⅰ期非小細胞がんに対する重粒子線治療は1回照射、すなわちradio-surgeryと呼べる照射法が実現される段階に到達した(シリーズ28参照)。
【肺がん】照射回数:1 回 治療期間1日
肝細胞がん
原発性肝がんの大半を占める肝細胞がんを対象に、重粒子線の持つ生物・物理学的特徴は、根治治療と低侵襲性を兼ね備えた新しい治療法として期待されている(シリーズ29参照)。
前立腺がん
5年生存率は91.6%、原病生存率は98.5%。5年局所制御率は99.1%、治療後にPSAの再上昇を起こさない生化学的非再発率は5年で83%と極めて高い確率を示している(シリーズ31参照)。この成績は、ホルモン療法+X線療法を併用した場合に比べ、生存率で10-15%上回ることが示唆される。
骨・軟部腫瘍
骨・軟部腫瘍は一般に放射線抵抗性であるが、重粒子線治療の最も良い適応のひとつ。3年および5年生存率は70%、58%であった。また骨盤、脊椎に発生した切除困難な骨肉腫78例においても、5年生存率33%が得られている。治療後も多くの患者は治療前と同等かそれ以上の生活状態を維持している。重粒子線治療は手術のできない骨軟部肉腫に対する治療法の新しい選択肢の一つである(シリーズ30参照)。
【仙骨にできた骨肉腫】照射線量:52.8GyE 照射回数:16 回 治療期間4週
直腸がん(術後骨盤内再発)
現在施行している73.6GyE/16回では、局所制御率が3年で92.1%、5年では89.3%、生存率は3年で72.8%、5年で51.8%と、放射線治療単独に比べ良好である。直腸がん局所再発に対する重粒子線治療は患者への侵襲が少なく、かつ効果の高い治療法として今後普及していくと期待される。
【参考資料】量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所、辻井博彦ほか,「放射線科学」:2007;50(7):4-19.