- 現状と実績
- 重粒子線治療の概況
重粒子線治療の概況
先進医療承認、短期治療の確立により患者数が急増
【治療患者数】29,000人以上の治療を実施
1970年代末より、アメリカのローレンス・バークレー研究所(LBL)で、既存の原子核実験用に建設された加速器を利用して、重粒子線治療の先駆的研究が行われました(現在は閉鎖)。その後、日本の放射線医学総合研究所(NIRS)により、世界初の医療専用装置(HIMAC)による本格的な臨床研究が開始され、重粒子線治療は有効性の高い低侵襲治療として成長し、世界に認められるようになりました。
放射線医学総合研究所の医用専用の重粒子線治療装置(HIMAC)において、1994年に臨床研究が開始されて以来、2019年末月現在、約29,000名の治療が行われています。 近年は特に登録患者数が急増していますが、この背景としては、①2003年に国の「高度先進医療」(現在の「先進医療」)として承認されたこと、②照射法が確立し、円滑に治療が実施できるようになったこと、③重粒子線の医学的特性が明らかになり、患者さま1人当たりの治療回数、期間が大幅に短縮されたこと、の3点があげられます。
2016年4月から一部のがんの重粒子線治療が国民健康保険でカバーされました。
現在は治療施設として、QST病院(旧 放射線医学総合研究所病院)にくわえて、兵庫県立粒子線医療センター(2002年より炭素線治療開始)、群馬大学 重粒子線医学センター(2010年開設)、九州国際重粒子線がん治療センター(愛称 SAGA HIMAT;2013年より治療開始)、神奈川県立がんセンター(2015年12月)そして大阪重粒子線治療センター(2018年)が加わり、6施設合計で29,000人以上(2019年末)の患者さまが治療を受けられています。
また、2020年には7番目の施設として東日本重イオンセンター(山形大学)が開始される予定です。
登録患者数の推移(放射線医学総合研究所)
【がん種別治療実績】前立腺がんが最多、先進医療制度適用が半数
登録患者のがん種別の内訳としては、「前立腺がん」が最も多く(27.8%)、次いで「骨・軟部がん」(10.7%)、「頭頚部がん」(10.1%)、「総合」(9.6%)、「肺がん」(8.7%)などが主となっています。
QST病院の治療実績(1994.6~2019.3)
【参考資料】量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所