- 重粒子線治療とは
- 重粒子線治療の特長
重粒子線治療の特長
精緻な照射技術に支えられた、優れた治療効果
X線、γ線に抵抗性のがんにも優れた治療効果がある
粒子線治療は、従来の放射線(X線、γ線)に抵抗性の難治がんの治療を行う目的で研究が進みました。速中性子線や陽子線による粒子線治療は、一部のがんに対して優れた治療効果を上げています。しかし、陽子線治療はがん細胞の殺傷能力においては、X線、γ線と同等であり、一方の速中性子線治療には、線量集中度が低いという弱点があります。重粒子線(炭素線)は、速中性子線より優れた治療効果と、陽子線と同等のシャープな患部集中照射特性を併せもっています。
がん細胞への的確な照射技術が不可欠
日本の重粒子線治療装置は、重粒子線治療は水平・垂直・45度などの照射ポートを組み合わせて治療が行われています。ターゲットとなるがん病巣の位置に線量を集中できる重粒子線の特長を最大限に発揮できるよう、腫瘍の深さに応じて、垂直方向・水平方向のビームのエネルギーを変化させ、的確に照射します。
最近はQST・放射線医学総合研究が開発した超伝導回転ガントリーの導入により、治療中の患者さんに優しい治療が行なわれています。
従来の放射線との違い
的確な照射に不可欠な「コリメータ」と「補償フィルタ」
加速したビームを腫瘍全体に照射できるように拡大し、「コリメータ」と「補償フィルタ」により整形されて、腫瘍に合わせて照射為されます。「コリメータ」は、がん病巣だけに照射するよう横方向の範囲を制限してビームの形を決める役割があります。一方、「補償フィルタ」はビームの深さ方向の到達範囲を調節する役割があります。重粒子線治療では、患者さまの治療計画データにより、個々にコリメータと補償フィルタを製作します。
ただし、スキャニング照射では、これらの治具が不要になります。
このほか、毎回、照射中に患者さまが毎回同じ体位をとれるよう、温度によって硬軟が変わるプラスチックを用いて、身体の固定用具を手づくりで制作します。
4次元X線CTによる高精度な立体画像診断
重粒子線治療では、がんのある場所を正確に把握する高精度な画像技術が欠かせません。最近では、呼吸に合わせて動く臓器に対しては、4次元X線CT装置を用いて、がんの位置を立体動画画像で正確に把握することができるようになりました。
治療精度の向上を支える最先端技術
呼吸に伴い変動する標的を照射する「呼吸同期照射」や、がん形状に合せて照射中にいくつかの機器を動的に制御することにより治療体積とがん形状の一致度(原体性)を向上させ、体表面近くの正常組織への不要な線量を低減させる「積層原体照射法」など、加速器技術や照射技術の研究開発が、治療精度の向上や治療の効率化を支えています。
【参考資料】量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所